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短大も専門学校の教育

 無料のランチバイキングは堺女子短大名物だ 半数以上が定員割れと言われる短大の再生のカギは何か。

 学生たちが歓声をあげて食堂に駆け込んできた。堺女子短期大学(堺市)の名物、ランチバイキングだ。この日のメニューは、シーフードグラタン、トマトとキノコのパスタ、焼きたてのパン、フルーツサラダ……。学生はおかわり自由、そして無料だ。

 バイキングだけではない。学内にあるフィットネスやリラクゼーションの施設もすべて無料で利用できる。2000年、生活文化学科に美容文化コースを新設するため、重山香苗学園長(55)が1000軒を超える美容室をあいさつに回るうち、多くの美容師から聞いた話から着想を得た。

 「若い女性の髪質が弱くなっていると言うんです。不健康な生活スタイルの影響でしょう」

 堺女子短大は、1922年に堺愛泉女学校として創立。65年、日本史と家政の2学科の短大となった。94年には定員160人に対して志願者が800人を超えたが、その翌年の阪神大震災で入試が出来なかったことが評判を落とし、震災の4年後には志願者が定員を割り込んだ。

 父の急死で、重山さんが航空会社を辞めて経営を引き継ぐことになったのは、そんなころだ。学生や親のニーズを探り、新しい短大像を打ち出したいと考えた。

 介護保険制度が始まる直前で、高齢者福祉に注目が集まっていた。しかし、核家族で育ち、高齢者と話す機会も少ない最近の若い女性の需要はあるのか。あれこれ考えるうちに思いついたのが美容と福祉の融合だった。「髪を整え、化粧することは、高齢者に活力を与え、福祉の分野でも活用できる。それなら今の若い子にもできる」

 短大の内部から「専門学校でやっていることをやる必要はない」という反対もあったが、最終的には理解を得た。

 「これまでは教養だけでよかったが、今の学生や親は、就職に結びつくことを重視する。これからの短大の使命は、充実した教養教育と、資格取得や社会人教育をセットにすることだ」と重山さんは見る。

 即戦力になれる技術と感覚を磨いて欲しいと、美容室の経営者らも教員に加わった。一昨年、昨年と2年連続で美容師国家試験に全員合格。化粧品会社や福祉施設からも求人が来るようになり、「就職率は100%」(広報課)という。

 すでに美容生活文化学科と名前を変えた学科にはビューティーメイク、舞台芸術に加え、一昨年、四つ目のメディカルケアコースも開設、福祉への本格参入も始まった。志願者数は持ち直し、300人前後で推移している。規模拡大や共学化による経営安定は考えない。「小規模の女子短大だからできることを追求したい」

 短大と専門学校の境界があいまいとなる中、どんな手を打てば、どんな学生が来るのか――まず、その詳細な分析が、短大として生き残る道の第一歩ということだろう。(松本美奈)

 短大の半数定員割れ 学校基本調査によると、私立短大は1996年度の502校をピークに減り続け、今年度は420校。日本私立学校振興・共済事業団によると、94年度までは2~3%の学校が定員割れしていた程度だったが、今年度は51.7%。そんな中、美容師や介護福祉士の資格取得ができる学科や、客室乗務員志望者向けコースなど、専門学校的な短大に切り替えた学校が健闘している。

(2007年2月9日  読売新聞)

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